作品詳細

吉田 新版

おすすめ!

吉田 新版

栗原洋一

祝福せよ、わたしは誕生したのだ。

おすすめのワケ

『吉田』。1990年7月に刊行され、2009年1月に再刊されたこの詩集は、七月堂の詩集の中でも存在としての「孤独」が静かに迫ってくる数少ない詩集の一つだ。
タイトルになっている「吉田」は地名である。この詩集には多くの地名が出てくる。その地を歩む栗原洋一の意識は歴史の流れに翻弄されるが「孤独」という存在であることで冷静な対峙がなされてゆく。
言葉は他者にあって発せられ、今を生きることが出来る。詩集はその余韻であるはずだ。
「・・・米料理がはこばれてきた。/米のとぎ汁を、ひとはだに温めたスープ。/飲むのは、わたしだ。/祝福せよ、/私は誕生したのだ。/砂の地形が崩れた。・・・」(「吉田」より)
稲川方人をして「この詩人と命懸けの詩誌を作ってみたい」と言わしめた詩集である。

~待望の再刊~

詩集『吉田』を思い出すときには私は必ず八〇年代以降の「詩」のことを考えている。反復されたその思考の中で、私は、栗原洋一本人に会うまで、大胆な錯誤に気付こうとしなかった。八〇年代以降のこの国の「詩」自体が錯誤なのだと言うつもりは毛頭ないが、私にとっては『吉田』は、七〇年代の詩的世代を切断した最初の具体であって、水流がそこに引き戻るかのような、動こうとはしない堰のような場所だから、これを読んだのは八〇年代初期だと疑わなかったのである。
(栞・『吉田』に寄せて 稲川方人)

詩集
2009/01発行

1,080円(税込)