作品詳細

空と風

空と風

斉藤梢

あの日に佇む
あなたへのレクイエム

素焼き


いつでも
隅っこが好きだった
真ん中が苦手だった
どこでも

避難所になった体育館の階段下に
あの日
座った
三月十二日のコンクリートは
思いのほか冷たくて
尾骶骨のあたりで
ピキッピキッと
悲しい音がした

  素焼きなんだから
  罅が入れば入るほど 
  趣があるものよ

抵抗する余裕もなく突如として
呑まれ砕けて無くなってしまった
形あるものたち

  罅なんだから
  割れてないのだから
  まだ使えるから大丈夫よ

強風警報の出ている二月一日の
歩道の真ん中を歩いて
わたしはわたしの罅のために
何本目かのセメダインを買いにゆく


詩集
2026/09/10発行
A5判 並製 カバー 帯

1,980円(税込)