作品詳細

その日と分かっていたら フクシマのまほちゃん
在庫無し

その日と分かっていたら フクシマのまほちゃん

渡辺みえこ

あの日を忘れぬために

2011年3月11日は私たち日本在住の者にとって決して忘れることのできない一日になった。どうしようもない悲しみや恐怖、怒り、言葉にならない感情が今も溢れる。本書は詩のスタイルを借りたドキュメンタリーのようだ。ただ絶望するわけでもなく、ただ言葉に酔うわけでもない。ここで語られるのは「あの日」実際にあった出来事であり、忘れられぬ悲しい記憶である。短い言葉をつなぐだけで、我々の脳裏に焼き付いている映像がいくらでもそれを補い、あの日へと連れ戻す。これからを生きるために、あの日を忘れぬために、このような詩の言葉が必要なのではないだろうか。


■詩集から

夕暮れのブランコ//夕暮れの空に向かって/ 君の背中の柔らかい骨を押すと/そこにはまだ小さな翼があって/寄せては返す 舟のようなものに君は乗って/いつまでも いつまでもせがんで/それは 終わりなく続くかのように思われたね/りょうた君//でもあの日 夕暮れはもう来なかった/君も ブランコも 学校も お兄ちゃんも/もう来なかった/西陽の中のスイカも そう?も/太った朝顔の種も/もうやってこなかった//あの日のように/空は青く/午後の日差しは輝き/欅の林の間から 海風が渡ってきているのに//


■読者感想

颯木あやこ(詩人)さんから――失われてしまった幼いいのちの澄んだ瞳や背中の柔らかい骨や、温かい重みに、優しく静かに語りかける言葉を、胸に受け止めています。こんなことが二度と起こらないよう、声を上げていかねばならないと改めて思わされます。 颯木あやこ(詩人)


絹川早苗(詩人)さんから――詩集、一気に読み、心打たれました。
心の叫びが出ていて、すべて被災地とその人々に寄り添った言葉で表現されていることに感嘆します。
ヒロちゃんーー」は、絶唱ですね。悲しみの中に母体の柔らかさ優しさが漂っていて…。
これがまた多くの人に読まれ、そして被災された人も涙とともに浄化され、勇気も湧き上がってくることを期待しています。
私もまた、ちゃんとしなければという思いに駆られています。絹川早苗(詩人)

詩集
2011/11/17発行
B6 並製