作品詳細

詩の遺稿

詩の遺稿

今井義行

ことばと沈黙のあわい

透明な糸
thread


透明な筋道を紡ぎ続けて
40年になる

独りで暮らし始めた頃からの年数

家族と暮らした日々の
倍になってしまった

時折、僕は行方知れずとなった

「透明な筋道は
1本の透明な糸である」

街から街へ
部屋から部屋へ
幾度も移ろってきた

もう数えることはないが
覚えている顔がある

それぞれに 1本の透明な糸が
結ばれている

なつかしさはない
ただ感謝と愛情がある

やがて最後の棲家に移るだろう

透明な糸を吐きながら
誰にも気づかれず
やがて途切れる 透明な糸


詩集
2026/07/24発行
A5判 帯付

1,980円(税込)