作品詳細

最後の夏

最後の夏

村口宜史

希求する希望に、生きるための 明日を探して

糸電話の糸を
ふるわせる。声を
今。紙コップに
大声で、わめくと
届くだろうか。糸の
切れた糸電話。空気を
ふるわせて。届くか
どこまで
と、問う声は、誰のものか
発する声は、誰なのか
紙コップを捨て。糸は
からまり。男は、空に
叫ぶのだ。何を
何に対し。何のために
人から、人に。見えない
糸を
紡ぐ。音が、途切れてしまう
前に。心臓よ、その鼓動と
伴に空気は、ふるえて
大地が、裂ける声を聴け。
声にして。実体を持つ肉体の
耳を。糸電話で、聞いてみる。
幾層にも織られた。造られた
絹の敷物の
上に。世界が在り
平面なのか。球体なのか
己では、解りもせず
夜の闇に、電話が
鳴り続ける。熱
糸を振るわせ (「糸を紡ぐ」)

詩集
2018/06/01発行
四六判 並製

700円(税込)