作品詳細

今昔夢想

今昔夢想

秋元炯

今昔物語の世界に遊ぶ

今昔物語の世界を元に自らの想像力で描き出した、秋元炯による“今昔夢想語り”

陰陽師は 満月となる今夜が危ないと云うのだ/鬼に狙われている 門を固く閉ざしておられよ/そう云われて/この館の主は門を厳重に閉ざし/警護の者を門の中に何人も立たせることにした/その一人が俺というわけだ/中庭には篝火が何本も焚かれ/今しも中空に上がった大きな月が見下ろしている/来るとすればもうじきですぞ/いつの間にか陰陽師が後ろに来ている/捨丸とかいう赤鼻で卑しい顔つきの男だ/大丈夫でしょうか/小心者の伊平という男もやって来る/やっ/捨丸が小さく声を上げる/凍り付いたように門のあたりを見ている/何者じゃ と伊平/あれが/鬼だ/押し殺した声/あの男が!/門のあたりには誰もいないのだが/二人には何か見えているらしい/いかん こっちへ来る/かすかな/砂利を踏む音/砂利の上に影のかたまり/ぽつりぽつりと連なり 近づいて来る/足跡/気付いた時にはもう脇を抜けている/近くにいた二人の姿がない/捨丸どの/叫ぶと 離れて立っていた男どもが皆こちらを向く/その時 生木を引き裂くような男の声/何人もの足音が館から駆けだしてくる/お館様が やられてしもうた/みんな刀を手にしている/脇を見ると/また 砂利の上に姿の見えない足跡/落ち着き払った足取りで/門に真っ直ぐ向かっている/丸太を差し渡し固く閉ざされた門/足跡の主はその門をするりと抜け/出て行ったようなのである(「篝火」)

詩集
2017/11/25発行
A5 並製カバー付

1,728円(税込)