作品詳細

北村透谷 その詩と思想としての戀愛

おすすめ!


在庫無し

北村透谷 その詩と思想としての戀愛

堀部茂樹

君よ請ふ 我をラブせよ

おすすめのワケ

明治時代、二十五年という短い生涯の中で後世に大きな影響を与える作品を残した北村透谷。その透谷の作品を詳細に読み解く本著は、日本の文学、近現代の時代精神を研究するのならば必携と言えるでしょう。死後の世界なのか、幻想的な世界で恋人と瓜二つの女性と出会ったり、鬼王や大魔王という様々なキャラクターが現れる『蓬莱曲』など、独特な世界観と幽玄な雰囲気に惹きつけられる若い読者も多いと思います。透谷自身が恋人に宛てたラブレターも必見。本著につけてキャッチコピーの一文がそれです。我をラブせよ!時代を越えて人の心を揺さぶる力がありますね。

透谷は、明治維新後、まだ、日本近代の入口の混沌とした国家社会の状況において、〈近代〉の本質をいちはやく感受して生き、表出し、苦悩して、死んでいった。その詩と思想は、日本近代の精神のもっとも本質的な源流である。(本書より抜粋)

なぜ、いま透谷なのか?我々は明治初期の透谷と同じ「激動」の時代を生きている。頻発する理由なき殺人、親殺し、子殺しを嘆く透谷の心情を我々は自分のことのように理解できる。苦悩しつつも激しい感情を吐露した恋人への書簡は時代を超えて魂を揺さぶる究極の求愛宣言だろう。本書は四十年の歳月をかけて完成した“入魂”の透谷論であり、夭折した透谷の詩と思想を縦横に語り、詩人の精神の豊穣さを見事に表現している。

文芸評論
2012/11/20発行
A5判変形 上製カバー付き