作品詳細

かけらを掬う
涙が流れてきたけれど
おいしかった
今度は残さなかった
誰もが経験するようなさりげない場面、日々にまぎれてすぐ見失いがちな一瞬の光を春本さんはやわらかくて強い手のひらに似た詩の言葉で掬い取って差し出してくれる
ユーモラスで、味わい深くて、いつのまにかちょっと泣きそうになりながら
こんなふうに見つめていい、書いていい、こんなふうに生きているんだから、と
私自身が解き放たれて励まされる気持ちになっていた
ーー川口晴美
青い空の中
歩き続ける仕事に疲れて
公園のベンチにあおむけに横になった
青い空しか見えなくなった
足にじーんと血が通いはじめる
荷物をしょっていた背中の重さが
ベンチにすいこまれていく
このままずっとあおむけのまま
重さのない体になって
青い空の中に
ゆらゆらとただよっていたい
詩集
2025/06/30発行
四六判
上製
2,750円(税込)