作品詳細

異和と痕跡

異和と痕跡

笠井嗣夫

著者の歩んできた人生の生きざまを素直に読める珠玉の一冊。

生き残った者たちと、やがて死ぬものたちが、すでに死んだ者たちと、まだ生まれていない者たちが、幻影のように交錯してゆく。
大岡信、碇昭一郎、天知茂、金太中、工藤信彦、澤田展人、寺山修司、成瀬巳喜男、原民喜、三崎亜記、森崎東、アンナ・カヴァン、テレンス・マリック、栗原康、佐々木譲、オスカー・ワイルド、チャン・イーモウ、フォン・シャオガン、服部良一等々他多数登場。



目次

アレクサンドリアの断崖……4
異和を生きる感覚――三崎亜記……10
大岡信の『昭和詩史』をめぐって……16
加害/被害、記憶/現在……20
共犯幻想あるいは逆さの鱗……26
〈技術〉を超える精神――テレンス・マリック……34
草の根ファッシズム……40
工藤信彦――国語的〈知〉の軌跡……58
原=成瀬的なものの刻印――『お國と五平』……62
小林政広『愛の予感』……68
この世界の、未来――『エクス・マキナ』……74
澤田展人『人生の成就』……82
詩人の孤独・存在の孤独――金太中……88
社会の縮図を描出――佐々木譲『沈黙法廷』……94
自由=記憶の欲動――栗原康……98
銃後の成瀬巳喜男……106
身体と機械――『オートマタ』……112
成立と流通……118
戦後現代詩史の再検討……132
体制とシンクロした日本人像……136
魂の問題――代島治彦『三里塚のイカロス』……142
知性と無垢――オスカー・ワイルド……148
血は立ったまま眠る……154
地平線の向こう――『スラップ・ハッピー・ハンフリー』……160
チャン・イーモウ『SHADOW影武者』……164
「党宣言」のアクティビティ――追悼・森崎東……170
「月の砂漠」を歌う天知茂……176
読書は再構築する……182
トランペット・オンリー・ジャズライフ――碇昭一郎……188
ノスタルジーは捨てた――フォン・シャオガン『芳華Youth』……200
服部良一と上海ジャズ……206
原民喜の「鎮魂歌」……212
パロディかパクリか……216
ハンガリー1956……222
転向させる技術と非転向でいるための技術……228
富士山登頂のゾンビたち……234
普遍と具体への意志――竹田賢一……240
亡命の果てへ……248
未成の夢――もうひとつのジャズ・シーン……254
冥府をめぐるキトゥンの物語……268
夕暮れの心と身体――廣木隆一『夕方のおともだち』……274
遊猟する骨と肉……280
雪のなかの〈帰還〉――ハンス・エリッヒ・ノサック……286
歓ばしきものの奪回――エミール・クストリッツァ……298
「隷従」への自発的な意志をめぐって……304
レッド・パージの闇の奥……310
私は氷の世界に生まれ、死ぬ――アンナ・カヴァン……316


評論
2022/12/01発行
B6判(127x182) 並製 カバー付

2,200円(税込)