作品詳細

インド回想記

インド回想記

オディッシーダンサー高見麻子

高見麻子/田中晴子

オディッシーダンスが創る宇宙を体験する
English version is also available!

オディッシーダンサー高見麻子は2007年11月3日にこの世を去った。
この本は高見麻子の手紙、エッセー、絵、写真など、教え子でもある田中晴子による編集で仕上がった。
オディッシーダンスはインドの古典舞踊である。
歴史の中で衰退することも有り、少年の女装で踊られることもあった。
タゴールダンスに惹かれ、クムクムラール氏に出会いオディッシーダンスに魅せられた高見麻子は、日本からインドへ、そしてインドからアメリカへ。
クムクムさん、康米那(かんみな)さん、サンジュクタさん、ラルフレモンさん達と出会う。
出会うべくして出会った人々との交流がさらに日々を深めてゆく。



本書より
麻子とコンテンポラリーダンス
ラルフ レモン


麻子がオディッシーを踊っている姿を見ると、僕はいつも泣いてしまった。

ふたりで踊りを創ったとき、彼女はたいへんオープンだった。とにかくなんでもやってみようとしていた。そして、それは時間のかかることでもあった。(チベット仏教の)多羅菩薩のような静かなる激しさでもって動いているときでさえも、彼女の動きには崇高とも言える本質的な静けさがあった。

初めていっしょに創る作業を始めたとき、どの曲だったのか覚えていないが、彼女がオディッシーを踊る、その側で僕は即興的に踊ってみた。彼女は僕のことを気に留めていないようだった。僕の存在は彼女の邪魔ではなかったし、僕は創造的に邪魔にならないようにしようとしていた。麻子は自分の領域に立って(踊って)いた。彼女の踊りのスピリットは、豊かな空間を周囲に持っていた。なんとなんと優しい空間だろう。

2回目には、僕は彼女に即興的に踊ってみてはどうだろうと頼んだ。僕のモダンダンスのグループといっしょに。ダンサーたちの中で、彼女は凍りついたように立ちすくんでいた。じっと静止したままで、周りで起きていること全部を見ていた。僕たちは彼女のまわりで踊った。彼女の知らない、見たこともない踊りの言語で。ほとんど20分ほどになるか、彼女はじっと止まったままだった。目を大きく見開き、あらゆる情報をできるかぎり取り入れていた。取り入れたものを噛み砕くために、その時間を使っていたのだ。スタジオでのあの日以来、彼女はあらゆることを試してみた。毎日、ふたりの作業は進み育っていった。そしてそれは「Tree」(2000年)という劇場で発表する、一公演分の長さの作品に発展していった。彼女の恐れを知らない(そしてしなやかな)包容力のある体は、異国情緒あふれ、確固たる、そして根源的に必要とされるなにかを付け加えながら、動いた。僕のモダンダンス実験にとっては非常に特別な感じで。

麻子はまた、すばらしい表現者だった。彼女のパフォーマンス―その時間、そのエネルギー、その空間。僕がいっしょに創造したダンサーの中には、彼女のようなパフォーマンスができるものはほとんどいない。麻子はダンスの天才だと思う。

(ラルフ レモン:振り付け師、モダンダンサー、コンセプテュアリズム アーティスト。2015年、前米国大統領オバマ氏からNational Medal of Artsを受賞。ラルフと麻子は、コンテンポラリーダンス作品「Tree」を2000年に発表した。)


Asako and contemporary dance
Ralph Lemon


I cried every time I saw her dance Odissi.

Asako was exceptionally open in our work together. Would try anything. But would take her time. Her time was evanescent. She had a sublime constitutional stillness, even when moving with all her Tara-like quiet fierceness.
When we first began working together I danced, improvised along side an Odissi dance she shared (I can’t remember which one). She didn’t seem bothered; I was not a distraction, which is what I was creatively attempting. She stood (danced) her ground. Her dancing sprit had such a generous space around it.
The second time we worked together I asked her to improvise, with my group of modern dancers. She stood frozen within the group. Stock-still, watching all that was going on. We danced around her in a movement language she didn’t know, had never seen, for a good twenty minutes and she never moved. She was using that time, eyes wide open, to take in the information, as best she could, her translation. After that day in the studio she tried everything, everyday as our work together grew and became an evening length theater-dance work titled, Tree (2000). Her fearless (and gentle) capacious body moved in a way that was quite special for my modern dance experiments, adding something foreign and emphatic and ultimately necessary.
Asako was also a remarkable performer. Could hold a performance, time, energy and space like few dancers I’ve ever worked with. I think Asako was a dance genius.

(Ralph Lemon is a choreographer, modern dancer, and conceptualism artist. He received the National Medal of Arts from the former President of the United States of America Mr. Obama in 2015. He and Asako together created a contemporary dance presentation Tree in 2000.)

エッセー
2019/04/19発行
A5判変形 並製カバー付

2,160円(税込)