作品詳細

幻視録

幻視録

秋元炯

ガレキの上を ゆっくりと浮遊していく。

キツツキ


死は キツツキの顔をして
男の肩に ちんまりと坐っていた

男はそれでも 背筋をのばし
病室の窓の方に顔を向けつづけていた

男にはもう 話をする気力が
尽きているのかもしれないと思った

昔 世話をしてもらい有難かった
さっきも言ったことを 言葉を変えて話しかけた

急に 男の身体がぐらりと揺れた
手で口を抑え 空咳を堪えているような仕草

そのまま 二度 大きく頭をさげた
帰ってくれということのようだ

病室を出ようとして振り返ると
キツツキは まだ男の肩の上にいて
灰色の目で 遠くを見つめつづけていた

詩集
2025/11/16発行
A5 並製

2,200円(税込)