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青い夢の、祈り

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青い夢の、祈り

湊禎佳

オキナワ、への祈り

ああ、まれびとも、軍隊(いくさ)もやってくる、この運命的な地理! それでも、つくづく思う。亜熱帯隆起珊瑚島嶼圏の気象、海象、地理がかもす「なにか」に気ぶれて生まれ育ったわたしは、「ここ」だけのものだ、と。この詩の本題は、実は沖縄戦ではない。それは青い空と海、地と水、風と気、波と凪、朝日光と夕陽、星月夜、草や樹や花、虫や魚や獣、ウチナンチュと歌舞と島言葉(シマクトゥバ)が担っている。これら無数の「いのち」が等しく預かる、死生の循環に連なる永遠の「なにか」である。その「なにか」に、この詩集をささげ、祈る。(「あとがき」より)

砲弾であいたお池にはいつの間にか水がたたえられてある
かえるが枝垂れに 地べたに 岩肌に ぶくぶくと卵を盛って
池面を見おろす蜘蛛の巣にはひからびた羽虫がゆれている
みなそこでは やごやたがめが泥になじんでしずかにねむり
おたまじゃくしをくわえて岩場へと這いずるいもりに
おどろいたあめんぼうがつんつんとはねると
小波が点々と生まれるはしから輪になって広がって交わって
わらわらとゆれ惑うみなもに 無数のいきものが現われては
はるかな生命の潮流をささやかに締めくくる死生の循環を見る (「とんぼ」より)


詩集
2015/04/27発行
170×210 小口折

1,100円(税込)