作品詳細
ヴィンセントの窓辺
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの魂に捧ぐ
世間体に一切こだわらない孤高の天性の画家都築直美が描く日常。
原画をどこかにやってしまう。
お花屋さんで花に見とれて用事を忘れて帰宅してしまう。
猫に添い寝をして寝てしまう。
(実は猫にとんとんしてもらっている)
真実を見つめるまなざし。
現実をすべて受け入れ、涙まみれで台所仕事をしている。
一篇一篇の作品に愛おしさがあふれてくる。
著者あとがきより
思えば、断崖絶壁の上で天から槍が降り注ぐような暮らしの中でも、時に、口笛吹きながら生きながらえて来られたのは、悲観と楽観が同居し諍い続けて止まない、混沌とした自身の多面性のおかげかも知れません。
鳴り響く
偽善漏れ警報器は
鳴り続けているのに
誰が止めるの
その部屋に そのガスが
充満するその前に
これが悪魔のエンディングなのか?
その醜悪さ
掌握しても
為す術なしなら
投げとけよ
その辺の野っ原によ
苦しかろ
おめぇもよ
悪魔に魂ごと
乗っ取られてんだもんな
屈辱のシール
全身にペタペタ貼って
なにやってるんだよ
剥がせよ
皮膚と同化する前に
12月の音
ゴキブリの赤ん坊
一目散に逃げていく
黒胡麻かとおもったよ 君たち
小さいのに
足が速いね
見事だね
走りがね
母さんのとこに
帰るのかい?
世界はね
心の臓突き破るほどに
バクバクだよ
クレイジーでね
赤と黄色が多い
ああ‼
ものすごい 極彩色だ
だから目が痛い
昨日から
いや
実は…もっと前から
抗生物質が大事なん?
ならば目薬
強いやつ
点(さ)してたら
猫が笑う
「わらわないで」
猫たち
なけなしの自尊心
粉の様に散り
雪になって降るから
僕は厳粛な気持ちになって
ただただ
空見上げて
僕自身の
12月の音を 聞く
詩集
2023/04/15発行
菊判変形 (220x150)
並製 カバー付
カバー絵:都築直美