作品詳細
現身
孤高の詩人が描き出す幽玄なる世界
現身は漂う舟のようなもの/舵をとりながら/やさしい言葉の沈黙をおくれ/無言の野原が見えたら/それは沈黙のやさしさというものかも知れない/いつの日か風も吹くだろう/希望の山脈を遠い旅にする//やさしい旅にどうか風が吹くように/あなたが旅の花を失わないように/ぼくは生きられる/こぼれた砂の現身をいだくように/透明な野原が幻であったとしても/空に現身のくさびを打ちこむ(「現身(うつしみ)」より)
私には仮死の体験が幾度かある。現世に生きることの危機を今も何処かで抱いている。詩など、書かなくても済むならそれも良い。「なんにもないから書くんさ」という言葉に戻れば、常人として生きられればそれに越したことはない。ただ世界も自己も不完全であり、その問いがあるかぎり私はノートを取り、自己を確かめながら生きるだろう。そして感得する予兆があれば、詩を書き充足を願うだろう。いわずもがな人間は社会的存在であり自然の一部なのである。この先、何が見えてくるか解らない。ただ旅は続けたいと思っている。(覚書より抜粋)
詩集
2014/07/01発行
A5変
並製 カバー付
2,640円(税込)