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ルーネベリと雪
あっ、晴れた。
図鑑を眺める。眠るまえのせかいはやさしい。だから、気がとおくなるほどたくさんのいきものが食べて食べられる世界を眺める。まよなかの、まんてんの星の下に無数の国。赤いろ。青いろ。緑いろ。夥しいかずの屋根の下で。多様なにんげんの図鑑もひろがる。
(中略)
うまれてくるひとよりもしんでゆくひとのほうが多くなってきて、ようやくさしせまったと感じるなんて身がすくむような思いがする。わたしたちはいったいだれから、救われればいいのだろう? いまこのことについてだれかとはなしあいたいのに、だれとはなしあったらいいのだろう。あなたの考えている本当のことがわからない。悩んでいたらみえない動物が近づいてきて、はなしが通じる言語を習えって言うの。それが愛情だろうって言うの。おかしいよね。いまからでもまだ遅くないんだって。本当に、覚えられるのかな。せかいはとても広くてプールみたいになってしまった。大きな水溜まり。あるいは、砂漠のようなもの。だけど、はだし、はだかでも、大丈夫なんだって。本当かな。本当なら、服を着ているのがじゃまになるかもしれないね。あなた、いっしょにぬいでくれる? あなたがいっしょならわたしだってもう、こわくないんだよ。
(「ミーアキャットの子は年上の兄弟からサソリの狩りを学ぶ」より)
七年ぶりになる第三詩集
手さぐりでたよりない闇のなかをすすんでいくと、
見慣れた風景がまあたらしくうまれかわっている。
なつかしい景色がまばゆい光につつまれて、
はだかの街路樹もかがやいている。
タケイ・リエ
岡山県生まれ
詩誌「どぅるかまら」「ウルトラ」「Aa」同人
詩集『コンパス』(ブロス)
詩集『まひるにおよぐふたつの背骨』(思潮社)
詩集
2018/09/30発行
A5判変形
並製 カバー 帯付
装幀:伊勢功治