作品詳細
霊園東通り南
光が、目的もなく
落ちてくる
冷静な言葉の佇まいをパズルのようにはめ込んでゆくと、鈴木康太の切ない景色が浮かびあがってくる。
光なんてなくても
愛と目は 同じ発音
黄色と緑は
落ちる手前に告白しあい
海沿いのもののけに
なると思うよ
裏声ちょうだい
くちびるの灰で
石を動かして
しげみをこだまして
栽培手帖に
燃えるようなあとがきをそえて
夜はすぐに
図鑑どおりになる
畳におちる隕石で
あなたのにおいがついた
パジャマが焦げる
けど、焦げても着ないと風邪をひく白亜紀
うなだれる背中の筋
影はつま先の上にある
種をえらぶ
変身の
変身は最初の一行で終わる
あごは鍵に噛みついたまま
いずれ消える砂糖で底が白い
あなたの声がきれいなので
欠けながら
続きまして
約数です
約数の約です
へその緒を結びなおす
うなじは頭と夢のように運ばれる
風が吹くと丸を作れない
愛の中で
小指の爪がはがれる
指紋は化石になりたい
ぷつぷつと
髪をおとしても
吸われるのを待っている
暮らしの幽霊
溺れれば
あなたが食べ終わった小骨の山
夏の窓についた
飛行機
音はしないで堅い殻の体のよう
くうふくですか
わたしは時々彼を起こして
手をまん中に持っていく
「裸のままで」より
詩集
2022/10/01発行
四六判
並製