作品詳細
おもちゃの映画
私は今、腐りかけの詩を一篇盗んできたところだ。
全く21世紀的ではないアンダーグラウンドかつ唯一無二の世界観。この詩集を手にした瞬間、詩人の罠にはまる。
門のある家だった。門柱に捜していた、S印刷所と、縦に墨書きされた看板があった。中に入っていくと、最初、一軒の家かと思ったが、一つの町並みのように次から次に家が建て込んでいた。そのどれがS印刷所なのか判断がつきかねた。聞いてみた。
夜になると、各々の家の窓に灯りがついた。そして、夜のカフェが石畳に開けた。
巧妙に印刷された町並み。
自分が死んでいたことを思い出す話を印刷しに。
(「S印刷所」)
詩集
2014/07/10発行
四六判
並製