作品詳細

流れつづける水の歌
ずっと、
ずっと考えていることです。
ひとりにならなければならないのでしょうか。
矛盾する日々にあってことばの起源は歌だったという一理に立ち還れば、詩はことばのもつ意味深さ、それはまた非言語として隠された声のコミュニケーションの身ぶりであることがわかってくる。
――倉田比羽子
「ほんとうのこと」は自分自身にさえ簡単に見失われてしまう。係争、こと愛情の介在した係争の中であれば、なおさらだろう。それをなんとか言葉に取り戻そうとするながしの試みには、血がにじんでいる。
――向坂くじら
五年、十年、
二十年、三十年、
五十年、その先、
おばあちゃんになったあの子
若い介護士、
がチッと舌打ちした瞬間、
潤んだ目をとじる、
そこによぎるものはなに
すべて終わったところで、
こんな夜はつづく
繰りつ返すレクイエム
まだ終わってないって打ち消す
握り込める弾丸なら
ホッチキスに装填
あの子の、
ことを歌い、
かさねる雪の日記
また似たような言葉で、
自分自身の物真似、
時に嫌んなるが正真正銘
これがこころの鐘
たったひとつの場所から、
たったひとつの声で、
たったひとつの星を願う、
こんな夜はつづく
どこにも、
辿り着かない、
暗い海の上
筏に縛られ、
ゆらり漂流する屍
いまだけ、
は声を失い、
誰かのすすり泣きにもなれそうだから
浮遊するからだ
自分が、
自分で、
いられなくなる日がくる、
ことにも気がつく
ほとんど気が狂う
指をぴくんと動かし、
上の空で名を叫ぶ
あの子の、
声を探す
明けない夜の奈落の底で
――「一夜」より一部抜粋
詩集
2026/04/17発行
150x220mm
上製 カバー 帯 栞 ホローバック 糸かがり
