作品詳細
ミュート・ディスタンス
ミュートする内臓がまぶしい
潜勢態としてのそのような自己を生きようとするヴィヴィッドな言語的生き物、それが私たちのまえにあらわれた新星川津望ではないか。
──野村喜和夫
唐突だが新嘗祭における「魂振り」が時間と生命の活性化を促すように、川津望の詩集は心と身体の活性化を促す。
──田野倉康一
流れるものは見当たらないが
欄干から身をのりだす
(もういない月の王様
うしろから力づくで
(日も息も短くなった
きゅうりの浅漬けのように揉みしだかれ
とっさに叫んだ王様の名まえ
(お手を触れないでください
抵抗したことも
一週間で破棄された婚約も
オートロックなのではいれない
かつて川が蛇行していた付近で
タクシーに乗った
わたしは貨幣で星座にされたっぽい
(「記憶喪失」より)
詩集
2018/09/15発行
A5判変型
並製 カバー・栞付