作品詳細
幻の光の中で
ときには無意味で懐疑的な 詩的錯誤ではない 精選21編
田中勲新詩集。
限りなく優しく波うつ繊細で透明な幻の影は、根源的に残酷な怒りを静めているのか
水に映る
真夜中の月影は
やぶれかぶれの感情を引き延ばし
揺れて、ちぎれて
半透明のくらげのいのちのをみすかすように
世界滅亡の予言者を
買って出る
植民地のひとびとは
遥か遠く
想像だけの水の中
月影に揺れる逃走や
闘争の、氾濫に
しったかぶりの心痛は
羞じのうわぬりにちがいないけど
生きるが勝ち
生きるが勝ち
夕べみた夢からのがれられず
よじれた水底の小石などを砕いて
煙に巻く
礼節知らずの
不機嫌な坂の上の果実に
おびえている
苦い水だよ、
(「されど非望」)
詩集
2017/04/23発行
A5変形
並製 カバー付
装幀:伊勢功治