作品詳細
インカレポエトリ叢書 12
きみには歩きにくい星
わたしのセンチメンタルはあなたの九九に勝つ
愛の準備をしろ
嫌われたくて贈った花束をそんなに大事にかかえないで、あなたのために熱にうかされる
なら本望だけど、わたし、あなたと結婚ができない、心中もできない、きれいな言葉もか
えせない、だから、綺麗なものしか愛せないと言ったあとに、わたしをじっと見つめるの
はおかしいわ、おかしい、かわいそう、きっと頭がおかしいのね、それか嘘つき、そのど
ちらかのはずなのだけど、あなたはどちらでもないじゃない、だから、あなたといるとお
かしくなるのは世界のほう、だなんて単純な結論で終わらせないでもっと話をいたしまし
ょう
ねぇ、持続性、わたしの崇高、植物図鑑を繰る世界ごとあなたにあげても、いつだって、
わたしの知らない角度から話しかけてくる、あなた、また綺麗に振り向けないし、あなた
と、その他への愛をわける言葉が見つからない、けど、一緒になにも、なにもないところ
へ行きたいと思えたのは、あなたが初めて、これだけは確かなの、ねえ、みて、今日も両
目が大きいでしょう、爪がぴかぴかでしょう、鏡みたいでしょう、わたしを見るのに飽き
ちゃったら、鏡にうつる自分を見てね、わたしに止血をしないでね、大丈夫、新しいこと
ばをおぼえたの、だから、また、あなたに会いにいく、わたし、わたしのこと、濾過して
いいから忘れないでね
嚥下、服薬、ひとまわりの邂逅
苺はどこがいちばん甘いんだっけね
なんて言いながらまるごと飲み込んだ
きみだって、軽薄
くすねたタッパーに
さらにくすねた朝ごはんを捧げて
ちいさい蜘蛛とやり過ごす
そうだ、そうだった
みじめだったから
鉛筆を尖らすみたいに
爪をみがいたのだった
ここにだけ巡る血
ここでだけかさつく皮膚
ここをだけ信じる人、人
いつもぜんぶまやかしでも
騙されなきゃ始まらないって
わたしはおもうよ
きみも
世界平和とか本気で短冊に書いてたじゃん
みんなが大丈夫だって卒アルでも言ってたじゃん
きみのエンターテインメントはぴこぴこと瀕死
謹慎
ほら、真摯、に
目でもつむっていればよかったのにね
神さまなんて
出会ってから信じればいいのと
わたしの神さまが笑うから
ここが、わたしの誕生日だった
おめでとう
きっと、いつかは解けるように
みんなつながって
溶けるように
なって
やっと
きみをしることができるよ
わたしが霧となる場所に
死じゃない花が咲くように
詩集
2021/10/31発行
四六版
小口折