作品詳細
![痛くないかもしれません。](./content/publication/images/itakunaikamoshiremasen.png)
痛くないかもしれません。
痛い、痛くない、痛い、痛くない。
強くて弱い、弱くて強い。
レナがなぐりかかってくるから
読みながらなぐりかえしてやるのだ。
それなのにまた立ち上がってなぐりかかってくる。
弱いのに強い、強くて堅いそのこぶしが
そのこぶしが、痛くてたまらない。―伊藤比呂美
ぼくは細い
はしごの先で
震える身体を
説得中なのに
怒れる虎と
化した君は
公転するのを
やめてくれない
君に咥えられて
情けなさそうに
頭を垂れている
ぼくの臓器
床には一面に
血が満ちていて
鉄の匂いが
赤く熟れている
ねえ、はやく遊ぼうよ
もう内臓なんかほうってさあ
真っ白な部屋で
真っ新なぼくたちが
遊んでいる、という
ふりをしようよ
(「虎」)
詩集
2017/09/30発行
四六判変形
並製 カバー付
帯文:伊藤比呂美・佐々木敦 栞文:堀江敏幸 装幀:福田正知
1,650円(税込)