作品詳細
方丈の猫
方丈の陽だまりに猫がたまってうとうとと……
季節の移り変わりの中で私たちは生活をしている。
都会で暮らす。山の中で暮らす。農地に囲まれて暮らす。
それぞれの世界の中で、自然の息遣いを、隣人、家族の温もりを、動物たちの寝息を。
若い時には気づかなかった「もののあわれ」は生活の中で実感として湧き上がってくる。
詩人の魂は今まさに自由を満喫するのだ。
第Ⅰ部「献上」より
月見の晩に
月に見とれて たましいを落とすと
魂(たま)ころがしがやってきて
後ろ足で転がしていってしまう らしい
その生態から言っても
形態から言っても
糞ころがしと同種には違いないのだが
仕えているものが違う らしい
糞ころがしは
日の神に
魂ころがしは
月の神に
芒(すすき)の中に人知れず
月かとみまごう
まあるく磨かれた たましいが供えてあるのは
魂ころがしのせい らしい
詩集
2019/02/04発行
四六判
並製 カバー帯付
装丁:タカハシデザイン室
1,650円(税込)