作品詳細
ひつじの箱
ある日、わたしがこの世界でみた景色を
見た目の可愛らしさだけに気を取られてはいけない。この本の中で語られる言葉はファンシーなファンタジーではない。しかし、品格を失わないこの詩人が描き出す世界は、ファンタジーに満ちた真実の世界である。
乱視がいいね
やっと、星の仲間入りをした
精確に見え過ぎるがために見過ごした目は
小瓶の中で凝視したまま足を抱えた姿勢で
溝に流されていった
*ふらんしす
一文字多い死の色を白と黒の丸い玉で追う
いかした舶来の名を呼べ
土に還る仕事は蚯蚓に任せた
さよなら、ささくれたさいせい
* ふらんしす
きみの名をシャボン玉に込めた
無加護に放たれた呼気のごとく
わたしの腐りきった魂いの欠片がちいさく瞬いている
気狂いの着ぐるみを着た きみの瞳に
* ふらんしす
乱雑でいい 爛々と整列した
ラマダンの声を成す卵子
必要な分だけをとりこぼす糜爛
にわとりいかに成りすました
ルピナスがよく似合う鳴けない鳥
女という傾ききった文字が
上手に書けるやつなんか信じちゃいけない
薄墨をなぞる いかさま
足の多さより柔らかさが欲しい
もう 瞑ってもいいよ
だいたい 光ってしまえば
きみの かちだ
(「らんざつならんし」)
詩集
2017/03/26発行
四六判
並製 カバー付
1,650円(税込)