作品詳細
新運河叢書 10
冬の虹
しぐれ晴れてつかの間仰ぐ山あひにふとく短き冬虹の立つ
私が冬の虹に出会ったのは平成十九年の十二月頃だったろうか。月に二、三回通っていた地元の「貝の沢温泉」に行く途中で、太平山登山道の分岐点に三吉神社の大きな鳥居の見えてきたとき、遠く太平山の山並み照らすような太く大きな虹に出会った。私は車を止めて降りると、思わず虹を仰いだ。
素晴らしい虹だった。普段見慣れている虹よりも太くくっきりと見えた。虹は子供が喜ぶばかりでなく、大人に人生の夢を抱かせる。ある時は目覚めるような鮮やかさで、ある時ははかない美しさで。
私はこの光景の素晴らしさを忘れることの出来ないものとして脳裏に刻んだ。(あとがきより)
91歳、著者の第3歌集。平成20年から28年までの作品を時系列に掲載。秋田の自然、その美しさと厳しさ、人々の強さ、暖かさを感じる。
手を振りてわれを待ちゐる妻あれば息整へて坂のぼりゆく
すすき穂の色とりどりの丘の道風はかすかなる音残しゆく
村人に追はれて森に逃げ込みし熊棲むといふ山に雪降る
ゆつくりと晩年すごす日々にして庭草叢の虫の音親し
歌集
2017/07/13発行
四六判
上製 カバー付
カバー・刺子製作:冨樫ナオ子 / カバー・デザイン:皆川燈
2,546円(税込)