作品詳細
エレゲイア
<詩――ポエジー>とは
常に誰からも必要とされぬ その存在そのものをも永遠に黙殺され続けて来た者たち/その言の葉の片々よりも とうの昔に潰え 霧散してゆく定めの者たちよ/しかし言葉(イマージュ)の迷路の中に 一瞬たりとも囚われ惑溺しえたことの/この悦びを 恍惚を/誰が汝らより よりよく知り抜いているというのだろう?/もし<無心(イノセンス)>という夢が<不死(イモータル)>という夢と同じ位リアルな重量を持つのであるのなら/詩人たちほど太陽の黒点を炎やす 究極の謎(エニグマ)を手にしている呪術師もないであろう(「詩人たち」より抜粋)
神官の身ぶりで、語という鉱石を掘り起こし、妻合わせ、舞わせる。
太古の洞から、現代へとつぎつぎに放たれる疑問符の矢。
暗い既知の地平を超えると、明澄な黄泉が立ち上がるのだ。
聞くがよい、血の速さで語る、詩人の連綿を。
寄せては返す、否定と疑問の鬩ぎ合う、潮騒の高鳴りを。
慟哭、自矜、そして遊戯。
この詩人は、逝くことの非情を哀歌(エレゲイア)にうたい上げながら、
実は<詩(ポエジー)>の何たるかを問い続けているのだ。――村松定史
詩集
2014/08/30発行
A5
並製 カバー付
装幀:湿布谷アコ