作品詳細
ドゴン族の神 ――アンマに――
ここはあの夢にまで見たドゴン! テンドウの聲はドゴンの長老たちを魅了する
アフリカ・マリ共和国/サンガ地方・パンジャガラ断崖の上/に住むドゴン族。
天童大人はどこまでも進んでゆく。
そして見知らぬ少年に託された不思議な「ウサギのお面」を日本に持ち帰る。
このお面はドゴン族の神の贈り物に違いない。
カイロの空
エジプト・カイロ国際空港到着
十五分前との機内アナウンスで
点灯され機内は急に騒がしく
耳慣れないコトバが飛び交い始める
招かれて初めて訪れる深夜のエジプト
窓枠から眺める月明かりのカイロの夜景
の光り輝く色とりどりの塊は世界一とか
大地の隅々まで 散りばめ 塗り込まれた
エジプト文明六千年の記憶
月明かりのなかに蘇り
旋回し傾く飛行機の窓から
川面が黒光りするナイル河を初めて見た
混雑した空港の到着口から
無灯の広場の闇に目を凝らせば
何処から湧き出てきたのか
路肩の隅々まで
白衣の男たちが並んで腰を下ろしている
街を進め行けども信号機はなく
対向車からの光も減っていき
車が左に曲がった瞬間
突然 漆黒の闇のなか
の家々の間に光を浴びた
灰色のピラミッドを見た
三十九年前 上空から眺めた三つの四角錐
が今 目の前に突然 現れた驚き
一九八九年六月 渋谷の古書店
の棚で見つけた一冊の書物『DANA』から
未知の若者の才能を発見し日本に紹介
祖国に招くと口約束した
スイス・ローザンヌに住む
若き天才彫刻家Yves DANA
一九六四年 日本は東京オリンピック開催
のため東京=大阪東海道新幹線開通
羽田空港=浜松町間のモノレール開通
都心の至る処で工事が行われ
沸き立っていた頃
ダナ 五歳の或る日
突然 生地 エジプト・アレキサンドリア
から 多くのユダヤ人と共に
一家四人 全ての財産を二つの鞄に詰め
着の身 着のままで母国エジプトを追放され
船でイタリア・ナポリへ脱出
そして その後 スイスのローザンヌヘ
これがナセル大統領の発令した
ユダヤ人追放政策Exodusなのか
彼を知るまで
多くのエジプト在住のユダヤ人が国を追われた
ことは 日本の学校で今まで一度も
聞いたことも 習ったことも
読んだことも無い
日本人の知らないエジプト現代史の事実
Yves DANAの名前を聞くたびに
子供の時に故郷を 国を追われること
とは何かと考える機会は増えたが
本当のことはまったく分からない
もしこの一人の若い天才を見つけなければ
未だ知りえず訪れることも叶わなかった
エジプト文明 六千年の大地の波動
詩集
2021/08/30 発行
A5判変形 (138x210)
並製
表紙作成:ワタナベキヨシ