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あのとき冬の子どもたち

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あのとき冬の子どもたち

峯澤典子

ぬくもりはじめた 祈りのかたちに 冬が 訪れる

この〈旅〉は、通り過ぎていく景色の印象を残しながらも、別の空間、時間を移動しているようだ。ふとした気配が記憶を呼び覚ますように、うす暗い空の下、それでも光を求めて彷徨う。

マッチを擦っても
新年の雪みちには犬の影もない
ひと足ごとに
夜の音が消えてゆく
冷気を炎と感じられるほど
ひとを憎むことも
許すことも できなかった

せめて
てのひらで雪を受ければ
いつまでも溶けない冬が
ふたたび訪れることはない病室へ流れていった
それを流星と呼んでいらい
わたしの願いはどこにも届かない
それでも星は
清潔な包帯のように流れつづけた(「流星」)

詩集
2017/02/01発行
四六版 並製 カバー付

カバー・表紙デザイン:吉岡寿子

1,320円(税込)