作品詳細
網棚のうえのリヴァイアサン
ユーモアとペーソスに満ちた悪魔祓い
多くの作品に動物が出没する。彼らの生き様は本書を読んで頂きたい。
何よりも豊かな語彙が私たちをカマタノブヒロ劇場へ連れ込んでしまう。
トップの作品は「水詩」と始まる。水死?とのイメージで私たちを煙に巻く。2番目の作品は「水しらず」とくる。始まりはこうだ。
少年は向こうみずだった/青年は世間知らずだった/年よりは冷や水だった/三人はみずしらずだった//……と。
この三人は渋谷の町でそれぞれの状況を纏いながら時とともに流れてゆく。その有様が痛快だ。
朝
いつものあさ
さあ
いつものように コーヒー片手に
いつものように 部屋の窓を開けると
そこは
いつもの朝ではなかった
頭上には雀の巣
雨戸のシャッターのすぐうえ
ぼくのあたまのすぐうえ
きのうまではなかったのに
いつのまに作ったんだろう
いつのまに巣喰ったんだろう
一羽の親雀が
(中略)
いつしか電柱には あまたの雀
ぼくのあたまには 一羽の雀
百万の雀と
一羽の雀
いくつもの朝と
たったひとつの朝
いつもの朝と
あらたなる朝
朝 さあ!
おはよう そして
ようこそ 雀の一族
いくつもの夜のあとの
いくつもの朝
九十九の夜のあとの
たったひとつのぼくの朝
いつまでも いつまでも
進め
すすめ
(「雀時計」より)
詩集
2018/11/30発行
四六判変形
並製カバー帯栞付き
栞:野村喜和夫