作品詳細
赤い河を 渡る
絶望を飛べ
『赤い河を 渡る』は前章「赤い河」と繋ぎの2編、後章「都市の水」からなる。
「赤い河」とはまさに体をめぐるエネルギーの象徴である。
「決心は続くか 窓を開けて明日を見る」その熱が駆け巡る。
「都市の水」とは関中子を取り巻く世界の潮流である。
「ものを考えるのは水の中の唇と一緒にいるようなものだ」と。
そしてその時は戻ってくることは無いと言う。
時の流れな中で言葉は紡がれてゆく。
飾る記念樹
夜との関係を変える
初めて見る 初めて知る 初めて体験する
伐採木 移植樹 表土が顕われ風に舞い
休息は人が自在に仕切る空間にある
ここに駅前広場 新しい住みか
五本の若い樹
剪定樹
高鳴る振動
震える腕を伸ばす
現れた若い胸 いきなり花を押し出す
葉を帽子のように頂き
何をやり残したのか
何を省略したのか
古く太い見事な幹そして華麗な色と香り
将来を贈る
だれに
山中の切通しを渡る橋を見に行って十年余を越え
君はどうしている 都市は走りだす 赤い灯を吐いて
未来 嵐を先物爆買いする
五月のある午後 昨日と別れる
記念写真をとる
笑い
涙
記憶を埋葬する指先
きらきら旧の住みかの入り口に立って陽炎揺れる
早き淵の川 渡り初めの橋に知り人の文字
答えられるか
君は 答えを準備できていただろうか
黄蝶 都市の触角 何本が定型かな
いち早く連なって交叉路の信号へ
さて 家々に紙面を回覧する
古いと言われる人手で
離れ若葉 雨の後で
人が森を梳いた
雨粒が森をぱらぱらこした
陽のわだちがガラス橋を屈折し
離れ若葉は建設途中を通る
為すべきことに行きつかない水に問いを添えると
雨は止む
葉脈は受けて浮き名立つ
仕上げの風は離れる葉を空高く掬い
思いのつづりを起こし
昨日の空白を縮める
陽に狩られる獲物よ
ひかりに報われるようなことをしたか
報いを受けると不安がるよりも
報われるようなことをしたか
うつりぎなとりわけうつりぎなきょうのわたし
街路に飛び立つ
ついておいで ついてこられるよ 遅すぎるくらいだ
離れ若葉は建設途中を通る
どこに芽生えよう
不安など
陽のささめきに心地良く雨が葉から落ちる
傷は癒えるさ
太陽がうわの空で通過する
間には空があるから太陽の疲れは取れるよ
雨は洗ったがその後を
ついていけない 早くて 優しすぎるの
詩歌
2025/01/20発行
四六判
並製 小口折り
本文中挿絵:関中子