作品詳細

カフカと詩人たち

カフカと詩人たち

イメージと詩の網状構造

小林弘明

カフカから現代詩へ。
散文と詩を貫く、イメージと構造の読解。


目次

序:カフカのイメージから詩の方へ

第一部:カフカの詩的言語
1  カフカ作品における詩的言語の構成
2  カフカと入沢康夫 イメージと詩の網状構造
3  逃走の線分と応答可能性
4  夢と演劇
5  アフォリズム「不壊なるもの」
6  カフカにおける伝承
7  カフカと鮎川信夫「不壊なるもの」から模倣まで

第二部:現代詩、構造論的アプローチ
1  クリプト化する言語 ―――稲川方人論
2  擬体による言語的介在、あるいは記憶の形体 ―――岩成達也論(1)
3  源泉と類似 ―――岩成達也論(2)
4  混合と分離、そして濁り ―――岩成達也論(3)
5  死児と断章
6  『薬玉』から『ムーンドロップ』
7  詩的言語(言語記号と感覚)
8  真実と虚偽 ―――瀬尾育生『アンユナイテッド・ネイションズ』を巡って
9  構造化された彼岸と此岸 ―――吉田文憲『生誕』を巡って
10 言葉なきものへの愛惜 ―――中本道代『接吻』を読む
11 『多重露光』と感覚そして質的な差異 ―――松尾真由美論
12 左川ちかとヴァージニア・ウルフ
13 眼差しの底で ―――ベルクソン/メルロ=ポンティ/吉岡実

初出一覧

あとがき

───

 通常、小説として認識されるカフカ作品から引き出される詩の通路を辿り開くことは、覚束ない方向であるにしても、一筋縄ではいかないイメージの構造に於ける潜在性を露呈させる期待はあるだろう。それは価値で染められたイメージではないことを強調しておきたい。カフカから詩への通路は、詩の幾つかの側面を覗かせるものであり、古い往来もあった通路である。今日の現代詩との対応関係を考えるとき、その通路は主体の変容によって複数化している。したがって逆方向から通路を辿り直すことは、意図せず別の通路を探り当てることにもなるかもしれない。
 カフカ作品における叙事詩的な内容を述べるプレテクストを読み直し、叙事詩に限定されない詩的な構造をイメージの側面から考えている。構造といっても端的には、感じられるものと為しうるものとの間に形成され、即物的なものではなく書かれる事で変化する構造である。無数のノイズあるいは亡霊が巣作っていることは確かなのである。すなわちカフカ特有のイメージを参照しつつイメージの批判的腑分けが必要とされる。
(「序:カフカのイメージから詩の方へ」より)


評論集
2026/09/25発行
四六判 上製 カバー 帯

3,300円(税込)
冊