七月堂通信
2015年07月の記事
ポエケット記
沖縄出張記が連載になってしまい最近通信ばかり書いていたので当分は更新しまいと思っていたが、年に一度のポエケットについて書かないわけにはいかないだろう。
文体がエッセイ調を引きずっているのは思いの外「出張記」に反応があり、読みましたとか面白かったですとか言ってもらえて調子に乗っているからである。あと事務的な報告よりもこういう私情にまみれた報告の方が読む側は面白いんじゃねーかと思ったことも理由の一つだ。それは今書いていて思ったのだけれども。
「ポエケット」・・・個人的には五回ほど参加させていただいている。毎年「つちのこ出版社」である七月堂を暖かく迎えていただいている非常に懐の広いありがたいイベントだ。この「つちのこ出版社」という表現もわりとウケたので調子に乗って最近連発している。自分は褒められると調子に乗り、怒られると落ち込み、牛乳を飲んだらトイレに行くようなシンプルな人間なのだ。
さておき、今年も参加させていただきました「ポエケット」。ご存じない方は少ないと思うがざっくり説明すると詩の同人誌の販売と詩に関わる人達の交流の場。実は七月堂で組版と印刷をしている同人誌の方々も多数出展されている。
基本的にどこに行ってもアウェーの洗礼を受けがちな七月堂だが、このポエケットでは大分事情が異なる。毎回ゲストの方の横にブースをいただいてしまっているし、おいでいただくお客様も七月堂の事を知って下さっている方が多いのだ。待遇に恐縮すると共にとても嬉しい。七月堂の本を並べていて「大体持ってます」なんて言って下さる方がひょっこり現れる場所は全宇宙でポエケットの会場以外に有り得ないだろう。
とにかく七月堂にとってめちゃくちゃありがたいイベントであるポエケットなのだが、下手をすれば自分より七月堂に詳しいお客さんが来る可能性もある場所で喜んでいただけるものを提供しなければいけないのは結構プレッシャーだ。今回はちょうど良い時期に完成した特装版『せんのえほん』をスペシャルな演出に使わせていただいた。
これは七月堂刊の『せんのえほん』を朗読イベント用に大きいサイズにしたもので、私家版。七月堂で販売はできないが見本が三冊あったので一冊は保存用、一冊はツイッターでのプレゼントキャンペーンに、そしてラスト一冊をポエケット会場でのプレゼントにさせていただいたのだ。快くご了承下さった著者の中村梨々さんには感謝です。(尚、こちらの特装本は『せんのえほん』の絵を担当したcocaさんの通販サイトで購入できます。数量限定。)
飴玉に七月堂のシールを貼ったものが当たりクジ。これを見事引き当てた方に特装本をプレゼントする。去年はクジ引き用の箱を作ってくれたボスが今年はあいにくの欠席。しょうがない。独断でただのビニール袋に飴を入れてクジ引きということにした。めちゃくちゃチープである。ブースに出している看板も段ボールに紙を貼っただけのお粗末なものだし、もっときちんとしたいなぁと思いながら年月ばかりが過ぎてしまった。そういうところは私生活に通じていそうで怖い。気をつけよう。
当日はあいにくの雨。しかも南の海上に台風が三つも発生しているという。ほんと飛行機を飛ばして台風に直接文句を言ってやりたい。何せ紙媒体にとって悪天候は一番の敵だ。他の出展者の方々もとても苦労したと思う。
水が染みにくそうな袋を選び、さらにそれにビニールをかけて本が無事に運べるよう厳重に荷造りをして出発。だが駅で筆記用具を忘れたことに気付く。売り上げをメモするという重要な仕事に不可欠なものをすっかり忘れているところに商売っ気の無さを感じていただけるだろう。
しかし、そんな事もあろうかと今回は助っ人として何かと気の利く新作業員氏を呼んでいるのだ。会場に駆けつけてくれた新作業員氏は案の定バッチリ筆記用具にメモ帳まで持って来ていた。ナイスリカバーである。といったところでこれまた重要なデジカメを忘れていた。沖縄には忘れずに持って行ったのに。こういうところから仕事と遊びでの気合いのムラを感じていただけると思う。あ、沖縄も仕事で行ったのだった。そしてケータイで撮ればいいのだが、そういえばそれも忘れていた。どうしようもない。しかし主催者の川江一二三さんがツイッターにブースの写真をアップしてくださっていた。とてもありがたい。これで逃げずにポエケットに行ったという証拠をボスに見せることができる。
七月堂ブース、今年は早めにはけます。と事前にアナウンスはしていたのだが、それ以前にクジ引きで特装版『せんのえほん』が早々にはけてしまった。ブースの目玉が開始一時間程度で無くなってしまったのは誤算だったが、見事に当たりを引き当てたお客様、おめでとうございます。結果野郎二人が飴を配る変なブースになってしまった。
しかしクジ引きだけでなく、ポエケット以外では有り得ない値段に価格破壊した新刊も今回の目玉商品だった。ボスを説得して実現した50%OFF商品、売れ残ったら隅田川から泳いで帰るぐらいの気持ちだったが見事に完売。お客様方、これは良い買い物だったと思いますよ。
商売の話はさておき、以前からの参加で顔見知りになった方々と今年もまたお会いできたのが何より嬉しかった。七月堂の本を楽しみにしてくれている方がブースを訪れてくれるのは本当に嬉しい。今度の新刊詩集についてツイッターでのつぶやきを見て声をかけに来て下さった方もいた。そうやって気にかけて下さっている方が一人でもいる限り七月堂はやらねばならぬ!という気持ちにさせられる。しかし新刊が安くなるだろうってポエケット狙いでだけ本を買うのはやめていただけると嬉しい。是非七月堂のホームページで買って下さい。直接七月堂に来ていただいても大丈夫です。お友達の為にも二冊三冊と買ってください!
結局自社の宣伝ばかりしてしまったが、とにかく七月堂のホームページをご覧になって楽しんでいただける方ならば大満足間違いナシのイベントが「ポエケット」なのだ。来年はなんと第二十回とのことでこれまた期待大。今回お会いできなかった皆様とは来年の会場でお会いできることを祈っております。
主催のヤリタミサコさん、川江一二三さん、毎年ありがとうございます。ポエケットの益々の繁栄を願って。
今年の七月堂ブースの様子(川江一二三さん撮影)
No.0040 2015年07月08日 O
七月堂通信特別編 沖縄出張記8~出張後~
二泊三日の出張がコラムで八回も続く連載になってしまった。「つちのこ出版社」にとって出張がどれだけ凄いことかこれでお分かり頂けただろうか。残念なのは「あのつちのこ出版社七月堂が沖縄まで来た!?」と誰もびっくりしてくれなかったことだ。まあつちのこなのでしょうがないのだが。
お読み頂いた感じでは大体遊んでいたと受け取られてしまっても仕方がないかもしれないが、こんなわたくしですがやることはやってきたんです。きっと神様は見て下さっているわ。でも実際、沖縄の書店さんには今頃結構な数の『青い夢の、祈り』が届いているのではないでしょうか。是非直接チェックしてみて下さい。
沖縄にいて異郷を感じたことはなかった。むしろ慣れ親しんだような不思議な感覚にとらわれたこともしばしばだった。というか、沖縄の空気感は七月堂の空気感そのものだったと今になって思う。これはまさしく知念さんの血が知らず知らずの内に作りだしているものなのだろう。こんなふざけた報告を(内心はわからないが)放置してくださっているのも「なんくるないさ~」的な思想が実践されていることを証明しているとも言える。やることさえやれば何時に来ても何時に帰っても構わん、という七月堂の時間感覚もかなり島時間に近いのではないか。といった具合に七月堂研究の新たなアプローチが発見されたようだ。
様々な問題で話題にのぼらない日はないといった沖縄だが、とにかく一度行ってみてほしい。沖縄から帰ってからというもの、あの気怠さと美しさが同居した魅力的な島に思いを馳せぬ日はない。端的に言うともっと遊びたかったと言い換えることもできるのだが。遊んで沖縄にお金が入るというのも重要な貢献の一つのはずだ。ただ暑いのは覚悟したほうがいい。
今回の出張でお世話になった書店の方々、タクシーの運転手さん、沖縄行きを知って嫉妬に狂い自分を闇討ちすることもなかった七月堂の皆さん、ありがとうございました。特に飛行機やホテルの手配を全部やってくれた御厨裕平さんに深く感謝します。御厨さんがいなかったら今回の出張は実現せずに絵空事で終わっていたでしょう。沖縄行きのきっかけを作ってくれた『青い夢の、祈り』の著者である湊禎佳さんにも感謝しなければなりません。そして「自分より先に沖縄に行きやがって・・・!」と言いながらも快く送り出してくれた七月堂のボスである知念明子さんに深く深く感謝します。
完
No.0039 2015年07月01日 O