七月堂通信

2013年09月の記事

七月堂動物記2

 現在七月堂にいるカエルはアマガエル2匹とツメガエル1匹です。アマガエルは静岡の妖精詩人がお土産として連れてきてくれた動物たちの生き残りです。
最初は1匹のカエルでした。その時は彼女のお庭の花で作られたお土産の花束の中にいました。花瓶に花を移し替えていると葉っぱの上に緑の可愛いカエルがいたのです。みんな大喜び。
その後、七月堂を喜ばせようと静岡の妖精詩人は花束と一緒に必ず生き物を連れてきたのです。カマキリを始め昆虫は籠に入れられ、トカゲやカエルも草いっぱいのケースに入れられてやって来ました。
静岡の妖精詩人がやってくる日は念の為にカラのケージを用意しておきます。トカゲとカマキリは一つのケージで暮らしました。餌としてコオロギを放します。青い筋の入ったトカゲは用心深く草や岩陰の間でじっとしています。静岡の動物を世田谷に放すわけにもゆかず、半年ぐらいで看取ることになりました。
次にカエルが来た時は11匹いたと思います。七月堂へ出かける雨上がりの朝に、ガレージの車の上に雨宿りをするように沢山いたそうです。
カエルは縄張りがしっかりしているので狭いところでたくさん飼うのは難しいのです。オスは体を大きく膨らませ声を張り上げ相手を威嚇します。30センチのケースで1匹でしょうか。
小説を書いているSさんの妹さんが2匹引き取ってくださいました。全く初めてとのことで、早く死んでしまったら気の毒かと心配しましたが、無用でした。一年以上経った今も元気でいるそうです。餌のコオロギを自転車で練馬から阿佐ヶ谷のペットショップに買いに行っているとのことです。
他のカエルたちは半年ぐらいのあいだに次々に死んでいったようです。というのは死骸を見つけられたのは6匹ぐらいで後は姿が見えなくなったということです。カエルは溶けるのでしょうか。死骸はお茶碗に入れて様子を見ていたのですが乾燥して針金のようになりました。七月堂の動物たちの最後の住まいである植木鉢に入れました。
爪ガエルを初めて見た人は目を丸くして絶句することが多いです。体の色は肌色で、まるで一皮脱いだように見えます。原始のカエルということで水の中で暮らします。餌を食べる時、黒い爪のある前足2本を交互に動かし、口の中に掻き込む様子はユーモラスです。子供がおいしいお菓子を誰にも取られないように口いっぱいにほおばる様子に似ています。
爪ガエルは最初2匹でした。もう一匹は一緒に飼っていた金魚を飲み込み窒息しました。金魚の大きさは5センチくらいでツメガエルの体ぐらい有り、まさか、まさか、です。気付いた時はカエルの口から金魚の後ろ半分が出ている状態で、飲み込めず、吐き出すことも出来ずに呆然としていました。
カエルは丸呑みする性質があるのでしょうか。18年くらい前にもピンクの大きなタカラガイを飲み込んで死んだのはバジェットガエルでした。巾着袋のようなブヨブヨした体で泳ぎます。このカエルは七月堂で当時アルバイトをしていた詩人Mのカエルでした。私が水槽を楽しくしようと入れていた貝だったので胸が潰れるぐらいショックでした。
私は愚かにもバジェットガエルを買いにペットショップへ走りました。飼い主が田舎へ帰っていた時だったからです。私と詩人Mは詩集を1冊作るか400冊作るかで喧嘩状態にあり火に油を注ぐことを恐れたと思います。詩人Mは別のカエルとは気づくことなく、カエルをそのままに、定価2万円と付けられた30冊の詩集と、怒りとともに七月堂を去りました。詩人Mのバジェットガエルがいつまで生きていたのかは定かではありません。
七月堂に最初に来たカエルはイボガエルです。事務所を梅丘から明大前に移転してきた1994年頃です。何を食べさせて良いか分からず、ハエを捕まえて糸で結び、飛んでいるかのように振ってみたりもしました。ベランダに小屋をしつらえて飼っていましたが、冬眠したと思われる二年目の冬以降は姿をみませんでした。イボガエルはご飯の時間が来ると小屋から出てきて待っている姿が愛らしかったです。
四国のウシガエルはひときわ大きかったです。手のひら二つからはみ出します。ひつじが丘のペットショップでバケツに入れられていました。
1200円ぐらい払ったと思います。引き戸のガラスケースにミズゴケを敷き、小屋を作りました。覗くとガラスに張り付き逃げようとします。
3ヶ月ぐらい経った頃、いつものように覗くとガラスの壁に飛びつき「ギャァーーー」という近所にも響くような声を出しそのまま死にました。生まれて初めて聞いた断末魔の叫びです。後悔の気持ちと恐ろしさでその場を動けずにいたことを思い出します。
詩人Mがバジェットガエルを買った時、私はベルツノガエルを買いました。緑色と黄色と赤い色の美しい文様がありました。ベルちゃんは一年くらい生きました。夏休みで家に連れ帰っていたのですが、泊まりがけの旅行に行っているあいだに死にました。3日ほどだったのですが・・・・・・。二階の私の部屋に置いたので、閉めきった部屋の暑さでやられたと思います。娘が「動かないよ」と手を入れたとたん皮膚が溶け、骨がバラバラになりました。「キャァーーー」という近所に響き渡る娘の悲鳴を初めて聞きました。
動物を飼うということはつくづく臨終に立ち会うことだと思った次第です。
2013年9月、七月堂ではカエルとコオロギの鳴き声を聞いています。

No.0008 2013年09月13日 C

新刊ラッシュ!

少し空気が秋めいてきましてね。さて八月末に峯澤典子さんの『ひかりの途上で』が完成し、今度は岩井暁志さんの『鵙と心音』(もずとしんおん)が完成しました。この二冊、同じ値段、同じ四六判ですが、非常に色合いの違う詩集です。ここまで雰囲気が違い、それでいて魅力的な本が立て続けに出る、というのはなかなか無いことです。是非どちらもチェックしてみてください。岩井暁志(いわいさとし)さんは今作が第一詩集。この独特の世界観により踏み込んでの次回作にも期待したいところです!
ちなみに、七月堂のツイッターアカウントも登場しました。雑務担当のOがツイッターも担当しております。そちらも是非覗いてみてくださいね。

No.0007 2013年09月08日 O